謹んで新春の御祝を申し上げ、皆様のご多幸年なる事を祈念申し上げます。
昨年は新年早々に能登半島地震に始まり、台風、大雨による大きな災害が続きました。世界に目を向ければ災害と戦争により多くの方々が被災を受けています。今年は我が街神戸も阪神大震災から30年を迎えます。大過なく過ごすことが本当に有難いということを今一度認識し心新たに新年を迎えたいものです。
さて、お釈迦様は出家され苦行通じて真理を探究しましたが、
悟りに至らず菩提樹の下で深い瞑想に入り、究極の真理とされる「悟り」を開かれました。お釈迦様が悟りを開かれた直後に発せられた言葉は、「奇なるかな、奇なるかな、一切衆生悉く皆な如来の智慧徳相を具有す。ただ妄想執着あるがゆえに証得せず」でした。「素晴しいことだ。生きとし生けるものは皆な佛なんだ。ただ妄想執着が邪魔をして人自分の心に取り付かれ、佛から遠ざかり迷い苦しむ」と。みんな佛様なんだと悟られたのです。
当院の宗旨である臨済宗のお経に「白隠禅師座禅和讃」があり、その冒頭に「終生本来佛なり」とあります。江戸中期に活躍された白隠禅師様も又、生きとし生きるものは全て佛であると説かれました。
では、この佛とは何でしょうか。それは二元対立がない世界、自分と相手を分けない、相手と自分が常に一つになることです。仏教の言葉に『自他不二』があります。自分と相手が一つになる。右手が自分、左手が相手、合わせて一つになる合掌の心です。
昨年大活躍の大リーグLAドジャースの大谷翔平選手は、新チーム参加での不安、更に信用していた仲間に裏切られ心穏やかではない中で活躍され、ホームラン50本と盗塁50個のいわゆる50:50を達成。チームもワールドチャンピオンとなり最高のシーズンを終えられました。
また、フランスではオリンピックが開催され、多くの日本選手がメダルを手にしました。大活躍された選手の皆さんは、まさにこの『自他不二』の心で心技体研ぎ澄まし 、ただひたすらプレーされたことが素晴らしい結果につながったと言えるのではないでしょうか。また、大谷選手は「そこの精神状態を含めて技術と思うので・・・」とコメントされていました。野球に対しトレーニングだけではなく日常においても、ごみを捨う、挨拶をする等生活一つひとつを大切に『自他不二』を実践されたのだと推察します。
我々の日常生活においても、より良く生きるために喜び、悲しみ、苦しみ、痛み等々『一つになる』ことを心掛けることが、より良く生きていくために必要なことだと思うのです。
先ほどの「白隠禅師座禅和讃」にも、『終生近きを知らずして遠く求むるはかなさよ』とあり、『仏様を遠くに求めるのではなく、自分自身が仏であることを自覚する』ことの大切さを説いておられます。相手の痛みは自分の痛み、相手の喜びは自分の喜び、無心になることによって相手と一つになる、相手の心と一ついなる、家族と一つになる、勉強と一つになる、仕事と一つになる、社会と一つになる、趣味と一つになる・・・等々いらないものを削ぎ落し無心になり、『自他不二』の精神を体現していくことが大事なのではないでしょうか。自分が変わればまわりが変わり、世界が変わり、世の中が変わり、時代が変わって将来も良くなっていくことでしょう。
物質、情報等々が溢れかえっている現代社会には、この『自他不二』の精神が大切です。その為にはお釈迦様も実践された座禅をお勧めします。座禅は決して難しいものではありません。姿勢を調え、呼吸を調え、心を調えていきます。短時間でも良いので座禅を続けることで充実した日々を送ることができるでしょう。
当院でも通年「座禅会」や「写経会」を行っています。是非参加頂きたいと存じます。
本年もよろしくお願い申し上げます。
令和7年 元旦 徳光院住職
橋本元勝 合掌